ラッセル幸福論
三大幸福論(ヒルティ(1891年)、アラン(1925年)、ラッセル(1930年))を読んでみようシリーズ。
ノーベル文学賞ですが、数学者でもあるラッセル先生は、Wikipediaによると「己の関心を外部に向け、活動的に生きることを勧める」ということらしい・・・
三大幸福論の中ではもっとも近代の著であるので、もっと哲学的、論理的な展開になるのかと思っていたらやや肩透かしを受けた印象。「幸福とはそもそも何か」というようなもっぱら真理を求めるギリシャ哲学のようなものとは趣を異にしており、どことなくラッセル氏自身の生きてきた経験と人生観に拠って書かれたところが大きいのかな、と感じる内容でした。
「第1部 不幸の原因」
「第2部 幸福をもたらすもの」
と大きく2章にわかれていて、それぞれ、不幸の要因と幸福の要因は具体的には何かについて、説明しています。
それらはいわゆる一般的な幸福という意味において、年寄りにはよく共感できる部分があると思うし、若い人にはさっぱり実感がわかないところが多いんじゃないかと思う。家族や子どもを持たない人にその幸せを説明するのは難しいし、そういう(説教臭い)立場そのものが偏見のベールに覆われてしまうために、万人に素直には受け入れ難いものになってしまう可能性もあるような気がします。
特に後半、熱意・愛情・家族・仕事を幸福の要因として熱くなるところも、この種の幸福を十分に感じた後に、「あぁ、あれは幸福だったのだ」と思い返すところにおいては深く感じ入ることができるのに対し、これから幸福を得ようとする人にとっては、単なる一般論を並べただけだろうと誤解されかねない点において、有用に作用しにくい書き方になってしまっているんじゃないかと思います。
幸福論のような哲学はやはり、幸福とは何かまだ理解できないでいる人や、まさに今不幸である人にとって真に有用であって欲しいし、そのように向かわなければならないという視点でいうと、この本はやや観念的というか、優しさが足りないというか、客観的な理系の冷ややかな面を感じるところもあって、もう少し(考える方だけじゃなくて)書くほうも頑張ってほしかった、そんな印象が残ります。
これまでの人生で(たとい一時でも)、心から「これが幸せだ」と感じる事ができた人であるならば、その幸せの源泉をこの本であらためて見つめなおし、これからより多くの幸せを求めるヒントを、この本から得られるのではないかと思います。逆にまだ「幸せ」という単語にどことなく違和感を感じる年代にとっては、(文章は平易ですが)なかなか難しい本かもしれません。