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てっぺん野郎

読書感想文

てっぺん野郎
本人も知らなかった石原慎太郎

著者: 佐野真一(1947ー)
出版社: 講談社
サイズ: 単行本
ページ数: 496,
発行年月: 2003年08月
 

石原慎太郎シリーズ第2弾 (第1弾は「オンリー・イエスタディ」)
実はそんなに慎太郎が好きでも、嫌いでもなかったので、この本を手に取ったときは正直、
「しまった」
と思ってしまいました。

はたして、こんな分厚い大作を読んでいる暇があるのだろうか、と。
(・・・案の定、読み終えるのに半月かかってしまいました・・・)


ノンフィクション作家として有名な佐野眞一さんの、石原慎太郎について批評している本です。
単なる「評伝(=ある人物について評価を加えつつ書かれた伝記)」とも違う、
ノンフィクション作家らしい緻密な取材を、作者のノスタルジックな世界観で彩色した、
時代人の回顧録とさえ思わせる、非常にスケールの大きな評論本です。

あとがきでのべられているように、「慎太郎 is Who?」をテーマに据えてはいるものの、
ほぼ半分のページを慎太郎の父、石原潔の生涯にスポットを当てており、

「慎太郎を知ることは、慎太郎の時代を知ること」


であるという作者の思いや意図が、非常に強く伝わってきます。

(偶然にも最近読んだばかりの)「蟹工船」の時代に生きた慎太郎の父、石原潔の時代を知ることで、
石原慎太郎が何を感じ何を思い、何を見ているのかすらもわかってしまったような錯覚
を導くこの構成の巧みさは、ノンフィクションでありながら、さながらフィクションのようにドラマティックであり、
下手な小説よりも作品として十分に仕上げられた、非常に完成度の高い批評であると感じました。

全体を通じて、作者は石原慎太郎の政治に非常に懸念を示しており、
それがひとつの(執筆への)エネルギーとなっているようです。
したがって非常にダーティな部分についても追及の手はゆるめず、容赦の無い批判も
多く書かれているため、人(慎太郎ファン)によっては、あまり愉快ではない内容なのかもしれません。

しかし、そんなことよりも私にとっては、「石原慎太郎と、その父、石原潔の時代」の息づかいを
これほど近く感じることができた本はこれまで読んだことが無く、
読後に思ったことは、やはり、

「慎太郎を知るためには、慎太郎の時代を知らなくてはいけない」

と、まんまと作者の思想に乗せられてしまっていた、そんな一冊でした。
いや、凄い本です。


そもそもなんで急に慎太郎に興味を持ったのかというと、
さかのぼること3期目の都知事選挙のとき、(私のイメージでは)あれほど
強気で尊大であった石原慎太郎(石原軍団付き)が、「最後のご奉公」と頭を下げながら、
田中康夫ばりに自分を貶めての選挙をやっていたことが、
昨日の今日までずっと「?」だったのです。

「あの人は、一体、なんだ?」

正直な気持ちでした。
もっと強くて、もっとまっすぐな、山男のようなイメージがあったのです。

青嵐会(田中角栄に反対する会・石原慎太郎も参画)が結成された1973年は
私が生まれた年ですが、石原慎太郎が政治家(衆議院議員)だったことはよく知らないのです。

石原慎太郎は、私の父の時代の人です。
石原慎太郎が都知事になったとき、父の時代の人々の支持を得て、都知事になったのだと思いました。
父の時代の男は、強くて、もっとまっすぐな、山男のようなイメージでした。
すくなくとも、私の実父を除いては(笑)

それがこともあろうか、目を潤ませながら、
「最後のご奉公をさせてください」と言ってまで都知事になりたい、なりたい、
とお願いしていた姿は、ショックというより「ありえない」の一言でした。

しかもそれで当選してしまう。


石原都政は問題が多かったのは噂できいていましたが、、、
父の時代の人々が選んだ石原慎太郎は、
「泣いて都知事をやらせてくれとお願いする男」だったのですか?

この本はこの疑問に、非常に的確に応えてくれました。
それどころか、わたしが感じたあの違和感、異質な感触はどこから来ているのかという事までも、
まるで預言書のようにここには書かれていました。


この本は、石原慎太郎を裸にすると同時に、
もしかしたらあなたのお父上やお爺様をも、まる裸にしてしまうかもしれません。


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