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東京の下層社会

読書感想文


日本の、明治~大正~あたりに東京に多く見られたスラムを中心に解説した本です。

著者自身のルポではなくて、当時の(あまり知られていない)資料やルポをあらためて研究し、
東京(日本)のスラムの実態をよりリアルに再現、再び明らかにするとともに、
主として政治・経済的な観点から、貧困問題に対する警鐘と提言を述べられています。


当時のスラムの資料(ルポ)の解説と考察は非常に細かく緻密でリアリティにあふれ、
ましてこういう鬱々とした話題は、本来は読んでいて気分の良いものではないのですが、
著者の貧困問題に対する視点・考え方の中にある種救いのようなものが不思議に感じられて、

読み終えて全体を振り返ると非常に前向きに、すがすがしくさえ感じる本でした。


考察や検証が論理的で丁寧にやられておられるせいか、(一般には)理解しにくい
この(貧困)問題もわかりやすく、考えやすくなっていると思います。

特にこの本は、東京(日本)と日本人の事情や気質、性格という面や、社会や経済の情勢、
政治、震災など、よくよく多角的な分析に努めており、ひとつひとつの事柄を
非常に説得力のある説明で書かれていることも、当時の雰囲気がよりリアルに
伝わってくる一因になっているのではないかと思います。


「貧困を倫理面だけでとらえることにより、その構造的理解が阻まれ、あまつさえ
低福祉政策を維持しようとしてきた明治以来の政策に口実を与えていることに気がつかなかった。」

という考察のくだりは、
昨今の格差問題を考えるうえでも必要不可欠なものの見方であるような気がします。

大きな視点(国家・社会)と小さな視点(貧民窟・貧困)の両方一度に学べる良書だと思います。

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